ビナマキ 触手のやつ
長くてゴメンビナマキ
「…………ッ」
デカグラマトンの預言者、ビナー。その身体の最奥に存在する、球状の空間。
橙色の光にぼんやりと照らされた、薄暗いその空間は、子供用プールほどの深さに張られた粘度の高い液体、それからうねうねと動き回る、触手状のケーブルに満ちていた。
「…………ッ♡ ッッ♡♡」
その中心で、少女──小塗マキは、
「う〜〜〜ッ♡♡♡ん゛おッ♡♡ ひ、ぐッ♡♡」
蹂躙、されていた。
(……あれ)
目覚めたマキは、まず自分が生きている、ということにほっと胸を撫で下ろした。
油断していた。
アビドス砂漠に時折現れるビナーとマキは、過去に何度も交戦経験がある。
自分の情報解析、それを元にしたペイント弾が、原理不明だが都度変化している装甲の弱点、それを示すのに役に立ったのだ。
白いキャンバスに自分のペイントを好きに描けるのは、自分としても悪くはない。時折飛んでくるレーザーにそれなりに肝を冷やしながらも、マキはビナーとの戦闘には乗り気な方だった。
今日も今日とて装甲をインクまみれにしてやったマキは、そこをトリニティのお嬢様がぶち抜くのを眺めていた。いい感じにキマったグラフィティがべこぼこにされるのはちょっと残念だけど、それも含めていつものこと。
案の定砂に潜って逃走を始めたビナーを尻目に、マキは迎えのヘリに手を振っていた。
そういえば、ビナーってなんで毎回襲ってくるんだろうねー。さぁ? 来たらぶっ飛ばせばいいじゃんね⭐︎ お二人とも、気が緩みすぎですよ……
後部座席からハシゴが投げ落とされるまでの間、場の空気は完全に弛緩していた。だってそれが、いつものパターンだったから。
それがいけなかったんだと全員が知るころには、全ては終わっていた。
なんとなく、一番最後に垂らされたハシゴを掴んだマキが、ヘリへと引き上げられていく。
その途中、唐突に地中から姿を現したビナーが大きく口を開き──轟音の後、ビナーが再び砂に潜りこんだ。
それから何もなかったかのように、砂漠は静寂を取り戻した。
周囲にヘリのプロペラが回転する音が響く中、ぷらぷら揺れる千切れたハシゴの先端だけが、今起こったことが事実なのだと伝えていた。
一方、視界が真っ暗になった後、ビナーの口内で身体が砂ともみくちゃにされ、あちこち硬いものに身体がぶつかる感触と痛み、
ああ、あたしってばこんなところで死ぬのかなぁ他のみんなが後悔しないといいなぁと、思ったところで意識が落ちた。
それが、生きている。何かうす暗い場所に閉じ込められ、身体はロープのようなケーブルにぐるぐると拘束されているものの、死んでいるより遥かにマシだ。
(だけど、ここってなんなんだろ)
空間を照らす橙色の光は、ビナーのそれとよく似ている。相変わらず、体内……なんてものがあるのかはわからないが、そこにいるのだろう。
この空間は、別に暑くもなければ寒くもない。背中に当たる感触も、あんな全身機械の内部なのに柔らかい。
隙間なくケーブルに覆われ、とても動かせそうにはない手足を除けば、意外と快適な空間と言えるかもしれない。
(うーん……普通なら、実はここは胃で溶かされかかってるとかの心配をするんだろうけど)
どうも、死の緊張感というものをマキは持てずにいた。
それはぶつけた影響で、今も鈍い痛みを発する部分を避けるようにケーブルが巻かれていることであるとか。
動けはしないが、重いなとか苦しいなとかは思わないくらいの拘束であることとか。
なにより、球場の壁面に張り巡らされたケーブルに、自分の銃と上着がまったく無事のまま、行儀良く引っ掛けられていることだとか。
言葉を交わせたこともない相手に、こちらへの気遣いを感じてしまっていることが、理由にあるのだろうか。
まぁ食べられた時は相当痛かったし、死ぬかと思ったけど。
もしかすると、彼は……もしくは彼女は、待っていたのだろうか。
自分が、最後にロープを掴むことを。
それってつまり、対話の意思があるってことで……
「ねぇビナー? ビナーさん? ビナーちゃん? 聞いてる? もしもーし? あんま身体痛くないんだけど、もしかして治療してくれた感じ? ありがとうね! でもちょっと自由にしてほしいっていうかさ、目的が知りたいっていうか! ……もしもーし?」
返事はない。しんとした空間にマキの声がぼやぼやと反響したが、それだけだった。
害意は無いが、対話もない。八方塞がりな中で、なんとか先生たちに、自分の無事を伝えなければ。
「そうだ上着!」
あそこに引っかかっている上着の中には通信機が入っている。ビナー襲撃に合わせて配られたあれは、どこでも電波が繋がるようエンジニア部の手が入った特別性だ。あれなら、ここからでも助けを呼べるのかもしれない!
うんうん唸ってケーブル相手にマキが格闘を始めると、その抵抗を感じ取ったように壁面が、ぶるりと震えた。
「なに? ……ひっ!?」
急な熱を背後に感じ、マキは思わず悲鳴を上げた。
なんとか身体を捻ろうとすると、ぬるりとした感触が返ってきた。ペンキやエンジンオイルよりずっと粘度が高いそれが、壁面から、天井から、床から染み出しては、服越しの身体に浸透してきている。
着衣のままプールに入った時のような不快な感覚に眉を顰めるマキのことなどお構いなしに、液体はどんどんと水かさを増してゆく。
それが止まったのは、マキの顎下あたりまで水位が上昇したころだった。
液体は大体人肌より少しうえくらいで、熱いどころかちょうどいい。なんというか、お風呂に入っているみたいというか、肌がちょっとぴりぴりするというか──
──ぴりぴりする?
「こ、これ溶解液だったりしないよね……!?」
暴れようにも、拘束が緩む様子はない。でも、このままじゃ全身ドロドロに溶けてビナーの胃の中で人生が終わってしまうのだ。
なんとか暴れまくって、発信機と銃を回収したらメチャクチャにぶっ放して、なんならビナーを内側からぶっ壊してやるんだから……!
◇
十分後。
疲労で死んだような顔のマキが、相変わらずぐったりと横たわっていた。
身体が溶ける様子は、無い。
ピリピリしてたと思ってたけど、時間を置いたらなんかぽかぽかしてきて、ふわふわしてきて気持ちがいい。
相変わらずケーブルの拘束も外れる気配は無いし、でも口まで沈んでしまわないよう引っ張ってくれてたりするし、何が目的なんだろう。
拘束を力で何とかすることを早々に諦めたマキは、ただぼんやりするくらいしかやることがない。ビナー、やっぱり装甲が汚されたから怒ったのかなぁ。
毎回綺麗になってるんだから、別にいいじゃん。それよりチヒロ先輩、油断するなって怒るかな。それとも心配するかなあ。ユウカはどうだろ。
先生は、どうかなあ。心配してくれそうな気がする。ハレ先輩は、コタマ先輩は……。
もしかして、もう二度と……。
「だ、ダメ……そんなこと考えちゃ」
嫌な考えが次々と思い浮かんできては、頭にずしんとのしかかってくる。
あ、まずいな、と思った頃には、マキはぼろぼろと涙をこぼしていた。
拘束されていては、それを拭うこともできない。それも尚のことみじめに感じて、ますます涙が溢れてしまう。
「……な、何してんの……あんたが、わるいんじゃんかぁ……」
それなのに、自分が泣いている原因を作った元凶のくせに、対話しようというつもりもないくせに、天井から降りてきたケーブルが涙を拭おうとしてきたり、頭を撫でるような真似をしようとしてくるのだ。
マキにはもう、ビナーが何を考えているのか、ますますわからなくなっていた。
なにより、そんなことをされてちょっとだけ安心してしまった自分自身のことも。
◇
拘束から一時間と少し。
「……っ♡」
身体が、熱い。のぼせたとかじゃなく、風邪引いたみたいな感じがする。
服に素肌がこすれると、なんか変な感じがする。ぽかぽかどころか、びりって来る感じ。これってまるで……その、気持ちいいっていうか、それにしたって、なんだかエッチな……。
「……まさかこれ、媚薬……♡」
インターネットに触れているせいで、相応に耳年増なマキは、もちろん媚薬の存在は知っていた。
フィクションにお馴染みのそれが、現実的にそうそうない事も。
原理も意思も不明なビナーから吐き出された媚毒沼に一時間以上浸け込まれたマキの身体は、完全に発情していた。
もじもじと身体を揺らすと、ぬるぬると服が擦れる。たったそれだけで、どうしようもなく気持ちがいい。一人でするよりも、はるかに。
すでにマキの頭から脱出の考えははるか後方に押しやられ、今ある気持ちよさを堪能することに夢中になってしまっていた。
だが、そんな程度の快感は、これから起こることに比べれば序の口どころの騒ぎではない。それなのに健気に身体を揺らしては、じんわりとした快楽を必死で感じ取ろうとするマキは、傍目にはいっそ哀れですらあった。
頃合いだと感じ取ったのだろうか。
ずるり、と空間内の大小様々なケーブルたちが、食べ頃の小動物を狙う蛇の群れのように、彼女に向かって動き出した。
「え? ……あ、ひッ♡ やめ、身体こすれてて……♡ やだ、あっ♡ ずるずる這い回らないで♡ 服の中、変にしないでっ♡」
媚毒のプールの水面下で大小の触手が服の内側を這い回る感覚、それが起こす波の感覚。特に性感帯に触れてもいないその動きだけで、ぎくん、と身体がこわばるほどの快感をマキは感じて、あられもない声を上げた。
快感を逃すこともできないまま、マキはただ触手の責めを受け入れるしかない。
やがて、触手の何本かがより大きな声を出す場所──性器に触れ、効果ありと情報を得て得た触手が殺到する。
そのようにして、最初は無軌道で荒い動きしかできなかった触手の動きが、徐々に女を鳴かせるよう最適化されていく。
当初大小しか無かったケーブルが、いつのまにか先端がブラシのようになっていたり、細かいイボのような突起が浮き上がった物だったり、細かく震えるものだったりと様々な形状が現れ、マキ自身の肉体により「効く」ものが本人の意思とは無関係に選ばされていった。
その様子は、まるで楽器の調律にも似ている。よりよい音を出すために、触手の愛撫は急速に、危険なまでに上達していく。
「〜〜〜っ♡ ……いやっ♡ おかしくなるっ♡ あやまるっ♡ あやまるからやめてっ♡ 〜〜あ゛っ♡ きもちいいとこふやすの♡やめてっ♡ 」
それと同時に、大して感じない部分にも容赦なく媚薬を刷り込まれ、声を上げる場所へと加工されてしまうのだから、たまったものではない。
履いたままのパンツ越しにブラシのような触手で秘所を磨かれ、もう何度目になるかわからない絶頂をマキは迎えた。ぷし、と吹き出した潮が媚毒の中に溶けていく。
その快感が引かない内に、腋と臍に取り付いた触手がぐねぐねと這い回り、快感を紐づけようとしてくるのだ。そんな場所で感じたくないとイヤイヤする聞き分けのないマキに、自分の身体がどれだけ雌なのか言って聞かせるように、触手は彼女の性感帯を一つ一つ、開いていく。
それでいてなお、ベッタリと張りついてしまったパンツを破いたり、隙間から無理矢理挿入してくるようなことは頑なにしてこない。
一番最初、生まれついて唯一雌だったその器官は、他が目覚めさせられていく中で置いてきぼりにあったまま、ただ待たされていた。それはきっと、彼女自身が降参するまで。
「あ゛っ♡ おひっ♡ だめっ♡ おへそっ♡くちくち、くちくちしないでっ♡ イかそうとしないでっ♡ やだ♡やだ♡やだ♡たすけて♡ イ゛っ♡ 〜〜〜ッ♡」
◇
三時間以上が経過した頃、その空間では。
原因がたった一人だと信じられないくらいの雌臭が立ちこめる中、マキは空間の中央へと少し移動させられ、大の字で固定されていた。
その様子は、悲惨のひと言に尽きる。
水位は寝た状態のマキを完全に沈めるまで上昇し、頭からつま先まで媚薬漬けにされていない場所が存在しない。
鼻と口を完全に塞いだ触手が空気の注入と水分の補給を行い、この時点でマキの生命維持はビナーのさじ加減ひとつに委ねられた状態になってしまっている。
口に……というより喉まで挿さった触手は柔らかいものであるものの、太さは顎が外れるかと思うほど太い。その上ごつごつとしたイボが浮いた形状であり、それが媚薬を吹き出しながら無理やり喉を開いている。
目と耳は外界の様子をシャットアウトするためか、あるいは液体が入らないようにか閉じられているが、耳には舌のように柔らかな触手がうねうねと這い回り、媚毒をなすりつけている。
顔だけでもその有様だが、身体はもっとひどい。
視界を封じられた中、マキは己の体がどんな目に遭ってしまっているのかをただ自覚させられていた。
肌は、まず手遅れだろう。
血流のせいか、真っ赤になった肌の上には、削り取られたのか産毛の一本も存在していない。異常に肌のハリはよく、おそらく水を垂らせばツルツルと弾くほどになっているだろうが、実際そんなことをしてしまえばそれだけで軽くイってしまうほどに開発が──というより、改造が進んでいる。
感覚の鋭い脇、手、臍、太ももに至っては、深くイくことも可能なまでに敏感に成り果ててしまっている。
今もずるずると触手がまとわりつく胸とその先端も、二度とまともな服は着れないほどに開発が進んでいる。乳首と、それからクリトリスは風が吹くだけでも身体が震えてしまうほどの快楽受容器官へと成り下がっていた。
そして延々入り口を責められたアナルも、腹の上から揺らされ続けた子宮も──無事なところは、もうほとんど残っていない。
マキはこれから、銃の反動で潮を吹き散らすほどに敏感になった身体を抱えていかなければならないのだ。
真っ暗な世界でそんな身体になってしまった自分のことを考え、それに何か思う前に快感で真っ白に塗りつぶされ、ぐちゃぐちゃになってしまった心の中で、マキは一つの結論を得た。
それからさらに、どのくらいの時間が経っただろうか。
びくり、と明確な意思を持った動きに、マキを囲んでいた触手の動きが止まった。
床のどこかから媚毒が排出され、どろどろのそれを服の裾からぼたぼた垂らしたマキが、空間の中央に座らされる。
ぺたん、と女の子座りになった彼女の手足と、それから胴体を残して拘束が外れ、天井へと退散していく。
目と耳を塞いでいた触手が離れると、マキの世界に久しぶりに音と光が戻ってきた。
安心する、橙の光だ。
最後に喉を塞いでいた触手がずるずると抜け出していく。50cm以上の長大な、極太の杭のようなそれが抜け出す感覚だけで、マキの股間はぷしゅ♡と潮を吹いた。
抜け出した杭に向かって顔を近づけた彼女は、恭しく口付けを落とした。液体の中、命を守ってくれた触手へお礼をするように。
「え、えへ……♡♡び、びなー……♡♡ おねがい、きいてくれてありがとね……♡♡」
お返しに、と頭を撫でるように寄ってきた触手に甘えるように顔を擦り付けながら、マキは続ける。
「あのさ……♡♡ さっきから、ヘンなとこばっかりきもちよくしてくれてて……♡♡
なんでかはわかんないけど、ほら……♡♡ たべわすれてるとこ、あるじゃん♡♡
みえる? へーこへこ、へーこへこって♡♡ ほら、ここ……♡♡
あたしの、おまんこ……♡♡
もしさ♡ その、大事にしてくれてるとかだったら♡♡ う、嬉しいな……♡♡
でもね、その♡ う〜〜〜っ♡ は、恥ずかし……♡♡
服、脱がせてくれてもいーよ……♡♡
ううん♡♡ ぬ、脱がせてください……♡♡
それから……♡♡ あたしのおまんこ……♡♡ そこだけじゃなくって、おしりも、おっぱいも、口の中でも……♡♡♡
す、好きにして、びなーがやりたいことぜーんぶやっちゃって、めちゃくちゃにしてほしいんだ……♡♡♡
ううん、めちゃくちゃにしてください♡♡♡お、お願いします♡♡♡
い、言っちゃった……♡♡♡」
恥じらう乙女のような真っ赤な顔でマキは機械への完全降伏宣言という、まともな頭なら信じがたいようなことを口走った。
危険な状況というストレス環境下に晒され、そこに身に有り余るほどの快感を叩き込まれてしまったマキの脳みそは完全に茹で上がり、きもちいいことをしてくれる存在であるビナーのことを、完全に恋愛対象として認識してしまったのである。
その脳が導いたのが、快楽への完全降伏──己が食べていただく雌であることを受け入れ、身体の全て、人権すらも開け渡して奉仕することだった。
触手に滲んだ媚薬を舌でいやらしく舐めとると、マキは座ったまま頭を下げた。それは、まさしく土下座に近いような体勢である。
マキに、そもそもそんなことをした経験はない。媚薬が齎した愛情でパーになった脳みそが、なんとか相手にも喜んでもらいたいと考えた結果の、本能的な動きだった。
する、と手足の拘束が外れる。
胴体に巻き付いた触手がぐん、とマキの身体を引っ張ると、強制的にその場に立たせた。
ガクガクと絶頂に揺れる脚でまともに立てないマキの頭は、気遣ってくれて嬉しいと益々幸福物質をとぽとぽ吐き出し、彼女の精神に無機物への恋慕と無理矢理されることへの反射的な幸福感という不可逆な変化を起こしていく。
手に巻きついていた触手が操り人形のように彼女の腕を持ち上げ、それをご丁寧にもまだ留まったままになっているシャツのボタンまで運んで、指をかけさせた。
自分で脱げ。口約束ではない、己の行動を以て降伏を証明せよ──と、そういうことだった。
このボタンを下ろしてしまったら、自分はどうなってしまうのか。
どきどきと痛くなるくらいの期待にハートを浮かべたマキの眼前に、巨大なモニターが降りてくる。
モニターにはどこにカメラがあるのか、まさに今、触手に支えられて立っているマキの身体を鏡のように映し出した。
どこからどう見ても、発情した雌が映りこんだその画面には、それを中心に大量のグラフと、数値と、文字列が並んでいる。
その中でも一際大きく縁取られた数値、幸福度と書かれたそれと、快楽値というそれが急速な傾斜で上昇しているのを見て、マキは無性に嬉しくなった。
「こ、このモニター♡♡
幸福度って……♡♡ ば、ばれちゃってる♡♡ さっきのどにいた子にきす、したとき……♡♡ すっごくしあわせになっちゃったこと、ばれてる……♡♡
あ、ここに絶頂回数って書いてある……♡♡ ななひゃっ……え、えへへ♡♡ はずかしいよ、もう……♡♡
場所ごとにも分かれて書いてあって、恥ずかしいなー……♡♡
うん、特にクリトリスでイっちゃってるけど……♡ でも、おなか……♡♡♡ ポルチオ、おされてイくとね♡♡♡ すごーくながくて、ふかくて、しあわせで……♡♡♡ 〜〜〜っ♡
お゛〜〜〜っ♡♡♡
……お、思い出すだけで、イっちゃったあ……♡♡♡
回数、ふえてるっ……♡♡♡
……ところでこの感度とか、どうやって測ってるの……?
えへへ……♡ うん、おへそでもイけるようになったよ、アタシ……♡ 腋の下でも、もちろんちくびでも♡♡ でもまだ、この表示だと……先があるんだね……♡♡
お尻の中に、乳腺の中に、肺……ら、卵巣なんて……そんなところまで、えっちしたいの……?
それに改造の、段階って……媚薬擦り込まれただけでこんなにおかしくなっちゃってるのに、もっと先があるの……♡♡♡
び、媚薬透析って……♡♡♡ 肌だけでもこんなにやばいのに、血液に直接なんて死んじゃうよ……♡♡♡
他にもすごいいっぱいあるけど……♡♡♡
淫紋とか、母乳改造とか、骨の軟体化……? それに消化器の永久改造とか、血液の媚薬化なんて、ぜったいだめ……♡♡♡
お゛ぉ゛っ♡♡♡ 想像でイ゛く゛ぅっ♡♡♡
……はっ♡ はぁっ♡
……? 承認、ってボタンが出てきた……♡
じ、じゃあアタシがいいよって言わなければ、だいじょうぶなんだ……♡♡♡ こんなの、おんなのこじゃなくなっちゃうんだからね……♡♡♡
ぜったいいいよって言わないんだから……♡♡♡
あと、この欄……♡♡♡ か、『完全降伏」って……♡♡♡ れ、『恋慕』とか、ホントでもそんなのモニターに出しちゃダメだよっ!
デリカシーないよっ♡♡ こ、この『マゾ』なんて……♡♡♡ ち、ちがうもん……♡♡♡
あ゛っ♡ だめ♡♡ しきゅーつぶれてイくっ♡♡♡
お゛ほぉっ♡♡♡ ほぉ〜〜〜っ♡♡♡ おちつくのに♡♡♡ イってる♡♡♡ イ゛ってるのに♡♡♡ イ゛ク♡♡♡
〜〜ご、ごめんね♡♡ いまぬぐから……♡♡♡」
食い入るようにモニターを見ていたマキの胴体を、触手がぐ、と締め上げ、子宮への衝撃でまたマキは絶頂した。
まるで早く脱げ、と催促されているようで、それでイってるんだからあたしは本当にマゾなのかもしれない。それがバレているのが、とても恥ずかしく──なにより、嬉しい。
「あ゛っ♡♡♡ ぬぐのに♡♡♡ しきゅーぐりぐりだめ、ぇ゛っ♡♡♡ ぼたんはずせないから♡♡♡ 」
乱暴に子宮を押されてマゾアクメを極め、降参の証の本気汁をとろとろ流しながら、マキはぼんやり、これって契約みたいだなと思った。
強制的にそれをする力はあるのに、ビナーはあくまでマキが自分の意思で脱ぐことを今も迫っている。それはいわば、お互いの同意を求めているということだ。
モニターにある承認ボタンも、マキが同意しなければ行われることはない。
ビナーが何を考えているのかは、マキにも結局よくわからない。なぜ自分を捕らえてこんなことをしてくるのかも。
ただそれが、彼、あるいは彼女なりのいわゆる気遣いとかいうやつで、そういうことをしてくれる存在ならば。もしくは、そういう形でしか何かを成せない存在ならば。
「ね、ねぇびなー……♡♡♡ あたしのこと、めちゃくちゃにしたいんだよね♡♡♡
かわりに、おねがいなんだけど……♡♡♡
きゃんぷとか、行ってみない……?
ちひろせんぱいがさ、としあけにつれてってくれたんだぁ……♡♡♡ おなべがおいしくてさ、グラフィティかいて、おこられたりもしちゃったけど……♡♡♡
そういう、ふつうのでーととかもしたいんだけど、ダメ、かな……♡♡♡」
代わりにこちらから契約を迫ってみて……それで今、モニターに大きく『提案された契約を承認』と書いてあるのだから、
自分の恋は、きっと一方通行じゃない。こっちがドロドロに染められたんなら、染め返すことだってできていいはずだ。
マキは震える手でなんとかシャツのボタンを一つだけ外し、スカートのホックを外し、パンツを太もも半ばまでずり下ろした。そこまでが、マキの限界だった。
「ぬがせて、ほしいな……♡♡♡」
意思表示には、それで十分だった。待ち構えていたケーブルは丁寧にマキの服を脱がし、媚薬まみれのそれを適当な場所に引っ掛けると、改めてマキの元に殺到した。
◇
キヴォトスのどこか、アビドス周辺。ビナーは身体を丸めながら、体内のユニットの一つ………人間で言うところの、子宮に位置する球状の空間の中の生徒のことを考えていた。
「考えている」というのも、人間の尺度での話である。ただ、注意を向けているのは確かだった。そして、強く執着している。
壊れ物を扱うように繊細に、ただ少しマキという人間に合わせて乱暴に、快感と幸福度の数値が上昇するようにと、ケーブルを操っていく。
人という生き物は、幸福を望むものだとビナーは理解していた。
そしてそれは今日、証明されたのである。
脳波を介し、マキの意思は言葉を交わさずとも伝わるようにビナーは己をも改造している。
消化器の完全性器化、排泄機能の永久放棄への承認、それと無事を伝えるための通信機の利用。その双方に了解の意思を返すため触手を動かしながら、ビナーは現在地点、生物的にいう寝床に飾られたペイントだらけの装甲を見て、いつかにと提案された山でのデートのことに思いを馳せていた。